講演会 報告レポート

2024年7月6日に開催された「マンション防災講演会」での、当日の質疑応答の内容や、参加者の方々から頂いたアンケートの結果をまとめました。参加できなかった方も、ぜひ内容をご覧いただき「おうち防災」にお役立てください!

講師


マンション防災士

釜石 徹

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浪速区のマンション防災講演テキスト
当日の資料はこちらからダウンロードできます。
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講演会の様子(釜石氏)

講演会の様子(浪速区社会福祉協議会)

個別相談会の様子

防災に関するパネル展示


講演後の質疑応答 まとめ


質問 ①

マンションに住む一般的な理由として「近所付き合いをしたくないから」といった話をよく聞きます。そんな中で、マンション住民に防災へ関心を持ってもらうためにはどのような方法がありますか?釜石先生がお住まいのマンションでされている工夫などがありましたら、ぜひお伺いしたいです。

釜石先生の回答

私が住んでいるマンションでは「自助の大切さ」や「自宅で簡単にできる具体的な備え」について、防災訓練などを通して普段から広報しています。災害が起きた直後に「共助」や「公助」へすぐに頼ることは実際、難しいからです。しかし、そういった啓発活動を行なったとしても、防災へ関心を持つ住民は70%程度です。無関心な方には、災害時にも自己責任で過ごしてもらうよりほかないと私は考えています。

質問 ②

私は乳幼児のお子さんを持つ保護者の方々を対象に防災活動をしています。保護者の方々も自宅避難を基本として考えていらっしゃいますが、避難生活が長期化した際には「情報を得たい」「足りなくなった物資をもらいに行きたい」といった理由で避難所を利用することを想定している方も多いです。そこで乳幼児のお子さんを持つ保護者の方々が、被災状況や避難状況を避難所へ報告したい場合、どのようにすれば良いかを教えていただきたいです。

釜石先生の回答

まずは1週間以上の備蓄をしておくことを優先してください。「公助」に頼ることを前提とするにしても、です。また被災地で避難生活を続けていくことがどうしても厳しい場合は、被災していない場所への「疎開(そかい)」も視野に入れてみてはいかがでしょう。小さなお子さんを持つ保護者の方々だけでなくすべての方に対して言えることですが、遠方の家族・親戚・友人と普段からコミュニケーションを取ったり、旅行先などで新たな人間関係をつくったりすることも、防災の取組みのひとつとなります。今はSNSが発達していますし、いざという時に「疎開(そかい)」できる場所を確保することも考えてみてください。

質問 ③

ペットボトルの飲料水・消火器・カセットコンロのボンベといった備蓄品には、消費期限や使用期限が記載されているかと思います。これらは期限が過ぎても消費・使用しても大丈夫なのでしょうか。また記載の期限以外で、消費や使用が可能かどうかを判断できる目安などはありますか?

釜石先生の回答

<ペットボトルの飲料水について>

消費期限が過ぎていても、一度沸騰させれば飲み水として利用できます。沸騰させずに飲むのはオススメできません。(※講師の見解であり、品質を保証するものではありません。)市販のペットボトル飲料水は「消費期限1年程度」のものが大体だと思いますので、できれば日常生活の中で活用しながら買い足す「ローリングストック」を実践していただきたいです。

<カセットコンロのボンベについて>

メーカーが定める期限は約7年です。ただしボンベの容器が錆びついている場合は、期限内であっても決して使わないでください。事故の元になる可能性が高いです。

(※中にガスが残っているボンベの処分方法は、お住まいの自治体の定めに従ってください。)

<消火器・消火具について>

消火器は使用期限がラベルに記載されていますので、そちらに従って処分時期・買い換え時期をご検討ください。講演内でご紹介したエアゾール式消火具(およそ1200円/本)にも使用期限が記載されています。大体は3~4年程度です。こちらは処分予定のものを、マンション内の防災訓練で活用するのも良いと思います。使用方法を実践的に学べますし、スプレーをシューシューするので子どもさんたちにも訓練を楽しんでいただけますよ。

質問 ④

災害発生時、マンションのベランダに面した大きな窓ガラスが割れないか心配しています。何か対策はありますか?

釜石先生の回答

お住まいのマンションが新耐震基準を満たしていれば、地震などの揺れによって、窓枠が落ちたり窓ガラスが割れたりすることは無いと考えていただいて結構です。しかし台風などで何かが飛んできて、窓ガラスが割れる可能性はあります。こちらへの対策は防犯用フィルムを貼ることです。ガラス自体の強度を上げ、割れにくくすることができます。ただ防犯用フィルムは家具用のガラス飛散防止フィルムとは違い、素人が貼ることはできませんので、専門業者に依頼する必要がある上にかなり高価です。昨今では窓ガラスそのものが強化ガラスになっていることもあります。まずはご自宅の状況を確認することからはじめていただいてはいかがでしょう。

質問 ⑤

大阪市以外の自治体で、避難者カード制度というものを聞きました。被災時には避難所に行き、避難者カードへ「自宅避難をするかどうか」「これからの生活で不安なこと」「足りなくなるだろう物資」などを記入し、行政がそれらの情報をまとめて、物資や人材を手配するといった制度だそうです。小学校の施設を利用して、避難所で水だけでも確保できる仕組みを用意している自治体もあるようです。このような制度や仕組みが、大阪市にもあるのかどうかをお伺いできればと思います。

浪速区役所の回答

<被災生活全般について>

まず浪速区においては、自宅避難を届け出る制度はございません。避難所の一番重要な機能は「自宅に住めなくなった方が生活する場所」ですが、自宅避難をなさっている方にとっては、情報収集や相談をする場・不足した水や食料、生活用品などについて支援を受ける場・地域住民同士が交流する場でもあります。ですので、自宅避難をしている中での不安や足りない物資に関することなども、避難所にてご相談いただければと思います。また、法にもとづき全国の自治体で取り組まれていることですが、大阪市でも「個別避難計画づくり」を現在進めております。こちらは介護度の高い方・障がいのある方など、おひとりで避難したり避難生活をおくったりすることが困難な方を対象に「どのような個別支援が必要か」を共助の中心となる地域の自主防災組織や行政で把握しておくという取組みです。この取組みにはみなさまのご協力も必要不可欠です。ご家族、お知り合い・お友達同士、マンション住民の方同士の助け合いをお願いできますと幸いです。

<水・食料の備蓄について>

大阪府・大阪市(浪速区)がご用意している備蓄品は3日分の水と食料です。保管場所は分散させ、臨機応変に対応できるよう手配しております。備蓄物資は当然、大阪市民のみなさま全体を対象とするものです。避難所へ避難されている方だけではなく、自宅避難されている方の分も含みます。(自宅避難をされている方は備蓄物資を避難所へ取りにきていただくことになります。)

加えて大阪市地域防災計画においては、事業者のみなさまにも、従業員の方の分の備蓄などもお願いしているところです。以上のように総合的な形で、浪速区住民のみなさまへの災害時支援を考えております。

釜石先生の回答

<避難者カードについて>

私はとある小学校で行われた防災訓練に参加したことがあります。その際、避難してきた方が避難所の受付で相談事をカードに書く、という訓練も実施されたのですが、100人が記入するのに1時間かかりました。浪速区においては、1000人程度を収容可能な避難所もあるとのことでした。先に述べた小学校の防災訓練と同じことをしようとすると、約10時間かかることになりますよね。これはまったく実用的ではないと私は思います。

「公助」について

さまざまな支援を行政の方々もご用意くださっていますが、それがみなさんへ十分に行き届くかどうかは、災害の規模によっても変わってきます。まずは自分たちで備蓄を行ない、災害への備えを整えていきましょう。感染症が社会問題となっている今日ですから、自宅避難のための備えは防災以外の場面でも役立ちます。みなさんには「1週間、自宅で籠城(ろうじょう)できる体制」を、ぜひ目指していただければと思います。

参加者アンケート


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